その(1)ラドン
まず、注目したいのはラドンです。ラドンは、放射性元素のラジウムから発生する気体なので、ラドンガスとも呼ばれており、普通は空気中に漂っています。 ラドンを体内に取り入れるにはいくつかの方法が考えられますが、代表的な方法としては、鼻や口などの呼吸器から直接吸い込む方法の他に、ラドンを含んだ水を霧(ミスト)状にして部屋に噴霧して皮膚から取り込んだり、更には、ラドンが溶けている水を、飲料水として、そのまま飲む方法などが考えられます。
ラドンの効能は、以前から認められていましたが、最近になっていっそう研究が進みました。 日本国内で主にその調査対象になったのは、ラドン温泉で有名な鳥取県の三朝温泉です。三朝温泉も「万病に効く」、とのうわさが病気で苦しむ人々の間でいい伝えられ、以前からたくさんの湯治客でにぎわってきた温泉で、現在は街を挙げてラドンの効能をアピールしています。 1939年の設立以来、医学と科学の両面からラドン温泉を研究してきたのが、岡山大学医学部付属病院三朝分院(現 同大学付属三朝医療センター)です。その成果により、ラドン温泉の効能が明らかになってきましたのでまとめてみます。
ラドン温泉の効能
・免疫系を活性化させ、体に抵抗力をつける
・健康を保つために必要な各種ホルモンや酵素の分泌量を増やす
・壊れた細胞の再生を促す
・炎症や痛みを抑える
三朝温泉で上記のようなラドン温泉の効能が確かめられ、呼吸器系の病気やリウマチ、神経痛、関節炎などに高い効果を上げています。
三朝温泉でのラドン効果が、そのまま玉川温泉に当てはまるなら話は簡単なのですが、事実は少しだけ複雑です。温泉水の中に含まれているラドンの量が、三朝温泉と玉川温泉ではかなりの差があるからです。
三朝温泉 : 32.2ME(マッヘ)(※)
玉川温泉 : 0.76ME(マッヘ)
三朝温泉はひとつの源泉ではないので、多少のばらつきはありますが、32.2マッヘというのは三朝温泉では平均的な値です。それに対し、玉川温泉水中のラドン濃度は桁違いに少ないのです。ラドン温泉というには1リットル中に5.5マッヘ以上のラドンが含まれている必要があるのですが、玉川温泉はその基準に達していないので、正式にはラドン温泉とは呼べず、このような考え方をすれば、三朝温泉のような効能は期待できないのです。
ラドン温泉には確かに効能があります。しかし、玉川温泉の源泉は、そのような基準のみからすれば、ラドン温泉とは呼べません。雑誌や本などで、玉川温泉はラドン温泉として紹介されているのがほとんどですが、それはちょっと違うのです。
このことにとまどう方もいらっしゃるかもしれませんが、次のように考えられます。玉川温泉の源泉におけるラドンの量の少なさは、摂氏98度という高温で噴出していることにヒントがありそうです。もし、源泉がもっと低温であれば、ラドンは温泉水のなかに混ざって湧き出てくることが予想されますが、高温であるためラドンは温泉水の中に溜まらずに、直接空気中に放出されているのでしょう。
玉川温泉一帯と、玉川温泉から少し離れた地区の自然放射線の量を計って比べてみると、玉川温泉一帯の方が、2〜3倍高いことがわかっています。その理由は、大噴から噴出しているラドンによる影響かもしれません。
三朝温泉の場合には、温泉水に含まれるラドンの量が多い為に、純粋にラドン温泉の効果が期待できますが、玉川温泉の場合にはラドンの効果はかなり限定的と考えた方が良さそうです。玉川温泉の効能にはラドン以外にもっと、多くの要素が関係しています。
※ マッヘ :1リットル中の空気や温泉水などに含まれるラドンやトロンの放射性物質の濃度単位
その(2)ラジウム
摂氏98度で噴出している大噴から、ラドンは空気中に飛び出しているらしいことを見てきました。そのラドンの元となっているのが、放射性物質のラジウムです。大噴から湧き出た温泉水に含まれているラジウムが、湯川を下って行き、鉛やバリウムなどとともに、川底に沈殿してできるのが北投石です。
ここでは、北投石そのものの中に含まれているラジウムの効果を考えてみましょう。ラジウムが体内に取り込まれるにはいくつかの方法があります。入浴したときに皮膚から入ったり、温泉水を飲むことなどによって体内に入ります。ラジウムは、ごく微量でも強力なガンマ線という放射線を出しており、そのガンマ線が体の奥の細胞まで届くと、次のような効果を発揮します。
・細胞の活性化と抵抗力の増強
・炎症や痛みを抑える作用
細胞が活性化するというと、わかりにくいと感じられるかもしれませんが、玉川温泉に入って、新陳代謝が活発になり「元気がよみがえってきた」、「若返った」、「肌がツルツルになった」と感じたら、それが細胞が活性化したことになります。
また、抵抗力が増強されれば病気にかかりにくくなり、もし病気になってしまったとしても、病気が早い段階で治ります。このように考えれば、炎症や痛みを抑える作用に関しては、説明するまでもないでしょう。
このような効果なら、ラジウム温泉ではない普通の温泉でも効能として謳っていますが、ラジウム温泉は気分的なものではなく、実際に病気を治す効能があるのです。ラジウムの放射線はすでに医療で広く使われています。そのもっとも大きな特徴は、対症療法ではなく根治療法だということです。つまりラジウムから発せられたガンマ線が病巣部の細胞に直接働きかけることによって病気を治すので、さまざまな病気に効果があるのです。ラジウムの放射線が、次のような病気に効果があることが、長年の研究でわかっています。
・神経麻痺、神経痛などの神経性疾患
・リウマチ、関節炎などの運動器系疾患
・肺炎。喘息などの呼吸器系疾患
・胃酸減少、胃酸過多などの消化器系疾患
・動脈硬化、高血圧などの循環器系疾患
・泌尿器系疾患
・子宮内膜炎、月経障害などの婦人科系疾患>
・糖尿病
・外傷
・眼科系疾患
・脳性小児麻痺
この適応範囲の広さを見て、何か思い当たることはないでしょうか。玉川温泉の適応症と比較してみてください。ほとんどがラジウムによる放射線の効能と重なっていることが見て取れます。別のいい方をすれば、玉川温泉の効能のほとんどは、ラジウムの放射線による効果といえるのかもしれません。
これまでに述べてきたことは、一般論としてのラジウムの効果です。そして、北投石にはラジウムが含まれています。ラジウムの半減期(※)は約1600年ですから、北投石の効果は半永久的といっても大袈裟ではないでしょう。また、ラジウム自体は強力な放射線を発しているとしても、北投石に含まれるラジウムの量はごく微量ですので、人体に悪い影響を及ぼすような強さまではありません。
※ 半減期 : 放射能の強さが元の半分になる時間
自然放射線が強い地域で発がん率が低い
一般的にあまり知られていませんが、大地や食物の中にも、ラジウムやカリウムなどの天然の放射性物質があり、それらから絶えず放射線が出ています。また、宇宙から地球に降りそそぐ放射線もあります。地球上の生き物が浴びる自然放射線の量は、1年間で平均約2.4ミリシーベルトになっています。(※1)
こうして、私たち人類はもちろん、あらゆる地球上の生物は、太古の昔から自然放射線を受けて生きてきました。でも、自然放射線が原因となって起きた病気に悩まされているという話は聞いたことがありません。それどころか、ほんの少しの放射線であれば、からだに良い影響を与えることを見てきました。さらに、いくつかのデータがありますので、ご紹介しましょう。
地球上には、自然放射線の量が、地球の平均よりも多い地域が何ヵ所かあるのですが、それらの地域における発がん率を調査した結果です。大変興味深い結果になっていますので、すこし細かくなりますが、数字をあげてみます。先にも取り上げた、ラドン温泉である鳥取県の三朝温泉と、三朝の温泉地区以外の地域、それから大分県の別府温泉の3地区でのがん死亡率を比較したデータです。(※2)
日本全体のがんの平均死亡率を1.000としたとき、三朝温泉地区の全がん死亡率は、男0.538、女0.463。三朝の温泉地区以外の地域は、男0.850、女0.770。また、ラドンを吸うことによって効果があるとされる肺がんに限ってみると、三朝温泉地区の男0.475、女0.187。三朝の温泉地区以外の地域の男0.926、女0.369となり、明らかな差があることがわかります。別府温泉のがん死亡率は、三朝の温泉地区以外の地域とほぼ同じですから、三朝温泉のラドン効果が証明されたといってもいいでしょう。
また、中国広東省の陽江地区には、年間4〜5ミリシーベルト(世界平均の約2倍)の自然放射線量になる地域がありますが、そこでのがん死亡率は、その他の地域のがんの平均死亡率を1.00としたときに、全がんで0.91、肺がんで0.73、胃がんでは0.48という結果が出ています。とくに胃がんでの発生率が半分以下というのは驚くべき結果といえるのではないでしょうか。これらのことから、ラドンを吸ったり、地球平均よりも高い自然放射線を受けることによって、がんの発生率が抑えられることが確かめられたといってもいいでしょう。
※1 大地から0.46ミリシーベルト、食物から0.24ミリシーベルト、宇宙から0.38ミリシーベルト、空気中のラドンから1.3ミリシーベルト
※2 Japanese Journal of Cancer Research 83 1992におけるMasaaki Mifuneらと同誌 85 1994におけるYasuyo Suzukiらによる研究
「放射線ホルミシス」という考え方
地球上の生きものは、植物であれ、動物であれ、太古の昔から自然放射線を浴びて進化してきました。つまり、自然放射線に適応し、それを体によいものとして受けとめ、うまくつきあってきたのです。ある研究では、自然放射線をまったく遮断した環境の中では、生きものは生きていけないという報告もありました。
しかし、これまで一般的に「放射線はすべて有害なもの」と思われてきました。どこの国でもそれは同じですが、特に日本においては、世界で唯一の被爆国ということもあってか、その傾向が強かったようです。では、これまでに見てきた研究結果は、何を物語っているのでしょうか。「放射線はすべて有害なもの」というこれまでの常識に、転換を迫るものとはいえないでしょうか?さらに、最新の動きをご紹介しましょう。
「放射線ホルミシス」という言葉を、みなさんは聞いたことがあるでしょうか?この言葉は、まだあまり知られていませんが、ギリシャ語の「刺激する」という意味の”horme”という言葉が語源です。それに放射線という言葉を組み合わせた、「放射線ホルミシス」という言葉が、今、医療の分野のみならず、健康分野全般で大変な注目を集めています。この「放射線ホルミシス」という考え方を、少し詳しくみてみましょう。
ラジウム鉱石の効能を知るうえで、とても参考になるはずです。「放射線ホルミシス」という言葉を世界で最初に使ったのは、当時、アメリカ、ミズーリ大学の教授だったトーマス・D・ラッキー(Thomas D.Lackey)博士で、1982年のことでした。ラッキー博士は「たくさんの量だと生物に害を及ぼす放射線が、ごく微量ならば、逆に、生物に有益な効果をもたらす」という研究成果を紹介し、それまで「放射線は、量が多い少ないにかかわらず、すべて有害なもの」と信じ切っていた人々に、たいへんな衝撃を与えました。
わかりやすくいえば「量が多い場合には害(マイナス)を持つ物質が、少ない場合には、刺激的(プラス)に働く」という意味です。
つまり、放射線も、たくさんの量を一度に与えれば、さまざまなマイナス効果をもたらして最悪の場合は死に至ることもありますが、ごく少ない量を時間をかけて与えれば、細胞を刺激し、免疫力を向上させて健康に役立つ、ということになります。
みなさんは、この話を難しいと感じるでしょうか?これは決して難しい話ではありません。ごく常識的な話です。放射線を、水、塩、薬などという言葉に置き換えて読み直してみて下さい。何の違和感もなく受け入れられるはずです。念のために、塩という言葉で置き換えてみましょう。
「塩も、たくさんの量を一度に摂れば、さまざまなマイナス効果をもたらして、最悪の場合は死に至ることもあります。でも少ない量の塩は、人間の生命活動に有益であるばかりでなく、無くてはならないものなのです」もう、おわかりでしょう。つまり、放射線も、使う量と当てかたさえ間違わなければ、人の健康に役立つのです。
「放射線ホルミシス療法」はすでに動物実験から人への応用の段階に進みつつあります。平成15年4月、東京電力病院院長の土方貞久氏を代表幹事とする「東京臨床ホルミシス研究会」という学術組織が発足しました。
この研究会の目的は、その名の通り「放射線ホルミシス効果に関する臨床的検討を行い、医学的・科学的にその効果を確認する」とあります。
つまりこの研究会が行おうとしていることは、医療機関と放射線ホルミシスを実践している民間施設とが協同して基礎的な臨床データを集め、人における放射線ホルミシスの効果を確認しようとするものです。具体的には病院から紹介を受けた人がラジウム鉱石を使ったミストサウナにおいてラドン浴を行い、どのような効果が現れるかを確かめます。 今後、このような研究が進めば「放射線ホルミシス」という考え方は、がんをはじめとするさまざまな難病と闘っておられる方々に大きな光明をもたらすことになるのです。
「放射線ホルミシス」がさまざまな難病の治療を根本から変える
平成15年11月5日、東京で、ある国際シンポジウムが行われました。「放射線ホルミシス」の最初の提唱者である、ラッキー博士の来日記念講演「放射線ホルミシス それは神の業か」と題されたそのシンポジウムには、放射線研究の世界的権威5人が集いました。
その中で、もっとも注目を集めたのが、(財)電力中央研究所・低線量放射線研究センターの稲 恭宏 博士の発表でした。
世界の中で難病と闘っておられる多くの方々のために」ということばで開始された稲 博士の講演の骨子をご紹介しましょう。現在の放射線治療の約10万分の1という「ほんの少しの放射線」をマウスにあてる実験で確かめた事実です。
@「ほんの少しの放射線」(※1)を、3週間マウスにあてると、からだを守る最も重要な免疫細胞の数が著しく増加し、免疫系で最も大切な細胞表面の分子が著しく増加した。その一方、からだを攻撃する、いわば異常な活性化細胞の数は減少し、炎症性や自己免疫疾患を疑わせるような体に悪い影響を及ぼす細胞は現れず、いわば免疫系の理想状態とも呼べる状態が形成された。
これまで行われてきた、高線量率照射(短時間に多量の放射線を照射すること)を続けると、ほとんどの場合、がんが発生していたが、それらの約10万分の1の、「ほんの少しの放射線」を、330日間、マウスにあて続けた場合には、積算量では、はるかに前者の高線量率照射の照射量を上回っていたにもかかわらず、発がんしたマウスは1匹もいなかった。それどころか、弱い放射線にあたっていたマウスは、放射線にあたっていなかったマウスよりもずっと毛並みも良く、若々しく、元気であった。
放っておけば、150日ほどで死んでしまう、多くの重病を併発するマウス(※2)に「ほんの少しの放射線」を5週間あてたところ、次のことが確かめられた。
・からだを守る最も大切な細胞を著しく増加させ、全身の臓器・組織を攻撃する異常な細胞を著しく減少させ、免疫系のいわば理想状態をつくった。
・全身のリンパ節の腫れや蛋白尿、糸球体腎炎、全身の血管炎および関節炎が著しく抑えられた。
・脳・中枢神経系の炎症や出血を著しく抑えた。
寿命が著しく延びた。
以上が、稲 博士の講演の内容を簡単にまとめたものですが、一般の方には難しい部分もあると思いますので、もう少し具体的にまとめてみましょう。現在、がん治療で行われている強い放射線を短時間にあてる治療法の約10万分の1という、「ほんの少しの放射線」を時間をかけてマウスにあて続ける実験をしたところ、次のようなことがわかりました。
(1)各種の重い炎症性疾患(腎炎、肝炎、血管炎、関節炎、肺炎、皮膚炎、腸炎、脳炎)
などが治った
(2)全身のたいへん重篤なリンパ節腫脹および脾腫が治った
(3)自己免疫疾患(全身性の多臓器不全やリウマチなど)が治った
(4)重症の脳・中枢神経系の疾患が治った
(5)寿命が著しく延びた
(6)副作用はまったく認められなかった
何気なく、(1)〜(6)の箇条書きを読み流してしまった方は、もう一度、その意味することを良く考えながら、読み直してください。これらの結果を正確に理解できている人は、まだ世界中でほんの一握りです。この研究成果が、あまりにも画期的すぎて、専門の研究者でさえ、信じられないという人がほとんどなのです。
「放射線ホルミシス それは神の業か」と題された国際シンポジウムのタイトルも、もし、「放射線ホルミシス効果」を用いた治療法が現実のものとなるなら、決して大げさな表現とはいえないでしょう。
この研究の結果を、稲 博士が平成15年8月にオーストリアのブリスベンで開催された、放射線研究関連では世界中で最も権威のある国際学会(※3)ではじめて発表すると、全世界のトップレベルの研究者たちから、ノーベル賞を越えた仕事と絶賛され、そのニュースは世界中を駆けめぐりました。
「放射線はすべて有害なもの」という考え方は、完全に過去のものとなりました。「ほんの少しの放射線」は、私たちの健康に有益なのです。そして、もう、みなさんもお気づきでしょう。今後、画期的な治療法となるかもしれない「ほんの少しの放射線」を発している天然石の一つが「ラジウム鉱石」なのです。
※1 1.2ミリグレイ/時 これは自然放射線の世界平均の約1万倍、従来の放射線治療の約10万分の1
※2 全身性のリンパ節腫脹(リンパ節の腫れ)、脾腫(脾臓の腫れ)、腎炎、肝炎、血管炎、関節炎、肺炎、皮膚炎、腸炎、脳炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、脳・中枢神経系の疾患、などを併発的に自然発症するマウス。
※3 国際放射線研究会議 ICRR(International Congress of Radiation Research)



